良いマンションを創るために
良いマンションとはどんなマンションでしょう。
もちろん、色んな考え方はあるでしょう。これから購入するのであれば立地やグレード、共用設備等々の条件が上げられると思います。
それでは、既に購入、居住済のマンションはどうでしょうか。
僕は以前、マンション管理会社に勤めていた時から、『どうしたら所有し居住している方々にとっていいマンションを創っていけるのか』を考えていました。自分が担当したマンションは『住んで良し、売って良し、貸して良し』のマンションにしたいと考えていたのです。
1.住んで良し:自身が快適に居住できること。
2.売って良し:現金化したい時には速やかに売却できること。
3.貸して良し:賃貸に出せば速やかに客がつき、空室期間が発生しないこと。
“良好なコミュニティ”なんて空虚な宣伝文句は言いません。
マンションの特質はその利便性。綺麗に清掃整備されたマンションに住んで頂きたいのは当然の事です。もちろん、末永くマンションに住んで頂きたいのですが、長い人生、色々な事があります。事情があって急ぎ資金化したい時に直ぐに売れなければ、不安な日々を過ごすことになります。手放すまでは無くとも自身が済むわけにはいかない事情が出来た時は、空室にしておいても管理費修繕積立金がかかるのでと賃貸に出すでしょう。しかし入居者がなかなか決まらなければ収入は無く経費だけが出ていく状況になります。自分は一生ここに住むと思っても加齢により施設に入所する場合は入所資金を用意するために売却する場合や施設の費用にあてるために賃貸に出す場合もあるでしょう。相続発生後はやはり何らかの処分が必要になるケースが多いでしょう。
では、この『住んで良し、売って良し、貸して良し』の三拍子がそろったマンションにするためには何が必要か。もちろん様々な要因が必要ですが、僕は次の3点が必要と考えています。
1.適切な大規模修繕工事が行われていること。
大規模修繕工事が行われたマンションは例え高経年であっても、売買でも賃貸でも客が付き易くなるのは不動産業者なら知っていること。旧耐震で造られたマンションであっても耐震補強工事が行われれば購入時の住宅ローン融資の対象になります。購入客、入居客からみれば綺麗に整備・修繕されたマンションは魅力的に映り、なにより大規模修繕工事が実施できたということは管理組合が適切に運営されていることの証明となります。
2.適正な修繕積立金へ増額改定が行われていること。
分譲時のマンションの修繕積立金は“売りやすくするため”に低額に抑えられているケースがほとんどです。上記1.の「適切な大規模修繕工事」のためには早期に修繕積立金の増額改定が必要。増額しておかなければ1回目の大規模修繕工事はどうにかなっても、2回目・3回目は資金不足になる可能性が大きくなります。また、タイミングを失し遅れれば遅れるほど、所有者の年齢層があがり年金生活者が増えるわけですから、増額そのものが難しくなって来ます。しかし、マンションを長きに渡って居住し利用するために、そしていざという時に資金化(売却)し、または現金収入を得る(賃貸)ために修繕は必要です。十分な修繕積立金がないマンションは将来廃墟化する可能性が高くなります。
3.管理費修繕積立金の多額の未収が無いこと。
マンションのは多くの区分所有者の共同体。当初は皆経済的には豊か(だからマンションオーナーになれる)であっても時間の経過とともに経済的に困窮してしまう方やモラルを失われる方も残念ながら出て来ます。
管理費等の未収金の督促回収は管理組合理事会から見れば同じ居住者同士の話となり、出来れば避けたいという意識が出て来ますし、管理会社の担当者から見れば未収金の督促など手間ばかりかかって営業成績にはつながらず、先送りしてしまいたいのが正直なところ。しかし滞納があればその分、管理組合の運営管理、そして大規模修繕工事の費用に支障が出るのは当然ですし、1件の未払いが放置されていれば他の組合員も払わなくてもいいのではとの心が芽生えても不思議ではありません。管理組合及び管理会社の機能不全が現れるのが未収金の放置なのです。多額の未収金のあるマンションは危険なのです。
これらの3つのポイントは
そしてこれからの少子高齢化時代にあってはさらにもう一つ、大切となるポイントがあります。それは・・・・・
マンション内に空き家が無い事
空き家が発生すると種々の不都合が発生してきます。
消防設備点検が行われず故障を見逃し火災発生時の被害拡大につながったり。雑排水管清掃が適切に行われないことによる漏水発生で他の住戸に被害が出たり、
理事会役員を行わず、総会に出席しない事による組合運営の機能不全の要因となり、
そして先に述べた管理費修繕積立金の未収の原因にもなります。そこに誰も住んでいない以上、督促も困難を極めることになります。
空き家の最大原因はおひとり様(子供のおられない方、夫婦でも子供がいなければいつかおひとり様になります。)の相続。
子供がいれば自らは住まなくとも売却したり賃貸に出したりして部屋を活用し管理費修繕積立金を払ってくれるでしょう。
しかし子がいなければ相続人はお亡くなりになった方の更に高齢や親や同様高齢になった兄弟等です。甥姪が相続人になるケースもありますが人間関係も疎遠となっていることが多いでしょう。相続人の中に1人でも認知症の方がおられたら相続手続きは暗礁に乗り上げます。行方不明の方がいても同様です。そもそも相続人が見つからない、相続人と思われる方がいても連絡が取れない事も考えられます。そして管理費修繕積立金の支払いを放置され、未収金が積みあがってくると危機的状況となって来ます。
行政の空き家対策は戸建てを対象としており、マンションの空き家を対象とした施策はありません。マンションの空き家は管理組合で対処せねばならないのです。マンションに空き家が出来たといっても、戸建てのように行政で解体撤去処分するわけではないのです。その処理は管理組合で、マンション全体の区分所有者の費用負担で行わなければならないのです。
マンションに空き家を発生させないようにする予防策としては、おひとり様に遺言書を用意していただくことが有効です。良いマンションを創りゆくために、末永く安心して暮らせるように、おひとり様区分所有者の方には遺言書を用意いただくべきです。
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